おさらい
診断士2次試験の経営課題特定の練習|事例4H15年与件編(詳細はこちらをクリック)にて、与件から経営課題の特定を行いました。
2段落目の一文が経営課題として把握できるかどうかが、中小企業診断士の二次試験のトーレニングにおいて重要であるとお伝えしました。
今回は、設問文をみることで、さらに中小企業診断士の二次試験の出題者が想定したストーリーを丸裸にしていきます。
中小企業診断士の二次試験過去問|H15年度事例4設問
まず、設問文を記載します。
第1問D社の平成13年度および平成14年度の決算書(貸借対照表、損益計算書および製造原価報告書)を用いて経営分析せよ。そして、D社が事業を継続する上で解決すべきと思われる問題点と緊急度の高い順に2つ抽出せよ。解答用紙には問題点(1)、(2)ごとに、それぞれ問題点の根拠を最も的確に示す経営指標を一つだけ挙げて、(a)欄にその名称を示し、(b)欄に平成14年度分の経営指標値を計算(端数が出た場合には、小数点第3位を四捨五入すること)した上で、(c)欄に問題点を30字以内で説明せよ。また、(b)欄にその問題点の解決策を40字以内で述べよ。
経営課題から振り返ると、
- 減収減益傾向の改善
- 営業利益の改善
でしたね。
なぜ、業績の改善ではなく、わざわざこの2つに分けたのかということです。
それは、設問内にあった「緊急度」です。つまり、即改善できる内容を求めていると考えられます。どんなに優秀な中小企業診断士であっても、減収をすぐに改善に導くことは難しいです。そのため、営業利益に関する内容が求められているのではないかと想定できます。
また、事業を継続なので財務体質の強化も必要となることから、安全性とくに緊急度が高いといえば、流動比率もしくは当座比率だろうとあたりがつけられます。
さらに、経営課題が2つあり緊急度として、営業利益の改善が挙げられました。つまりは即効性のあることとなるので、短期的課題となりますよね。
第1問は、短期的課題となるので、解決策に高付加価値化をあげることはダメだということもわかりますね。このあたりが、経営課題をしっかりと特定できていないと、間違った解答をしてしまう可能性が大となります。
それでは、減収減益の改善は・・・と考えると、中・長期的課題であると推測できます。
第2問D者のCVP分析による収益構造の把握について、以下の設問に答えよ。
(設問1)第1問で用いたD社の平成13年度および平成14年度の決算書データを使用して、営業利益の算出に関わる費用を変動費と固定費に分解したい。そこで、両年度で変動費率と固定費は変わらないものとして、(a)変動費率と(b)固定費(単位:百万円)を計算せよ(端数が出た場合には、小数点第3位を取捨五入すること)。
これについては、計算を行うだけですので、省略します。
なお、中小企業診断士の二次試験の事例4で頻出論点であるCVP分析や設備投資の経済性計算において、筆者が取り組んだ計算ミスをなくす方法については今後ご紹介していきます。
(設問2)設問1の結果を踏まえてCVP分析を行った場合、D社が営業利益の赤字額を0円にするためにはどれだけの売上高を確保しなければならないか。計算結果(単位:百万円)を(a)欄に記入し(端数が出た場合には、小数点第3位を四捨五入すること)、D社の収益構造の問題点と解決の方向性について(b)欄に50字以内で説明せよ。
営業利益の赤字額を0円という文言があるということは、短期的な施策を求められているとわかります。そのため、内容としては実際原価計算ができていない点をあげる必要があります。このあたりは、経営課題さえ理解できていれば迷うことはないかと思います。
第3問受注の採算性を明らかにするためには受注ごとの製品原価の算定が必要となるが、これについての次の設問に答えよ。
(設問1)どういう原価計算を行えばよいか。その種類と計算方法の概要を50字以内で述べよ。
こちらは、知識問題となるので割愛します。
(設問2)
D社が設問1の原価システムを情報システム化するには、(1)現在のD社の情報システムデータをどのように利用するべきか、また、(2)どういう情報システムのどのような必要なデータを新たに追加していくべきかのアドバイスをそれぞれ50字以内で述べよ。
第2問設問2で挙げた解決の方向性を、この設問で具体的に示しています。
第4問経営者は新たなNCタレットパンチプレス機を購入して、工場内の空いているスペースを設置し、加工品目の多様化と高度化を図る経営改善計画を考えている。そのために、保有している土地の遊休部分の一部売却も検討している。
導入予定のNCタブレットパンチプレス機は平成16年度末に120百万円で購入して全額をその時に支払い、平成17年度初めから稼働する予定である。そのために売却する土地の譲渡価格は80百万円(簿価60百万円)で、売却代金を全額平成16年度末に受け取る見込みである。また資金の不足分は金融機関から借り入れる予定である。新設備の減価償却期間を4年間と考えて、毎年27百万円ずつ定額償却し、平成20年度末には残存価格で売却できると見込んでいる。今後5年間の経常利益と、この機械装置を含めたD社の減価償却費を次のように見積もった。なお、経常利益を算出するにあたり、収益・費用の見越し繰延べはないものとし、また、ここに記載以外の特別損益は発生しないものと想定している。
(設問1)この経営改善計画から得られる今後5年間の毎年のキャッシュフロー(単位:百万円)を計算せよ(端数が出た場合には、小数点第3位を四捨五入すること)。なお、法人税率は40%とする。
計算のみですので省ぶきます。
(設問2)現状のままであれば、今後5年間の正味現在価値(NPV)は年間資本コスト5%と想定すると39百万円のマイナスであった。これを踏まえてこの経営改善計画を含め今後どうすべきかのアドバイスを80字以内で述べよ。
設備投資を行うということは、減収減益傾向への改善を図るための中長期的施策となります。また、与件文にも「既存設備で技術的に一層高度な製品を受注することは厳しい状況」と記載されていましたね。
裏を返せば、新たな設備であれば一層高度な製品受注が可能となり減収減益傾向の改善につながると言えそうです。
まとめ
詳細な解答については解説していませんが、それよりも大きな方向性をとらえることが重要です。
今回の場合ですと、第1問の経営分析で設備投資による高付加価値化を解決策として書きたくなりますが、求められている経営課題の解決とは何なのかを考えたときに不適切だと判断できます。
このような戦略的思考をみにつけていくことが、中小企業診断士の二次試験においてはとても大事です。事例4は見ていただいた通り、経営課題もストーリーの構成もとても分かりやすく描かれていますので、格好のトレーニング科目といって間違いありません。
経営課題 | 営業利益の改善 |
---|---|
経営分析 | 1 |
CVP分析 | 2―2 |
原価計算管理 | 3 |
短期的課題は営業利益の赤字に歯止めをかけることです。
第2問以降は原価管理の内容が求めらえれますので、第1問は役員報酬の削減と新たな人事政策による販売管理費の削減が要素として必要です。あわせて、流動比率もしくは当座比率については、遊休土地の一部を売却し、そのお金を短期借入金返済に充てることとなります。
第2-2で収益構造の問題点と方向性が求められていることから、実際原価の算定が行われていない点を解決策を提示します。
そして、第2-2で挙げた方向性の具体的内容が第3問へとつながっていきます。
経営課題 | 減収減益の改善 |
---|---|
経営分析 | 与件 |
設備投資 | 4 |
私のムダな経験が中小企業診断士の二次試験を独学合格目指す皆様に、少しでもお役にたてていれば幸いです。
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